『タコ・イカが見ている世界』 吉田真明・滋野修一/著 創元社
高学年児から読める。「はじめに」で「海の変わり者たちの心と体」
と書かれている。タコ・イカは何がそんなに〈変わり者〉なのか興味が
そそられる。何が〈変わり者〉なのでしょうか。そもそもタコやイカに
心や感情があるのでしょうか。この本にはそうした最先端の研究が書か
れていて興味深い。
まず「タコやイカの心の中」では鏡にタコを写すといろいろ違った反
応を見せるらしい。このことから「タコには意識がある」と言っている。
はるか昔この「意識」は人の祖先にも伝わり進化したという。タコの中
には〈社会性〉に富む種もおり機敏に体を制御する頭脳もあるという。
そうか、タコも人間も同じかと思われる。タコ・イカは恋のかけ引きも
すばらしい。「頭足類の性と繁殖の行いは、腕や口を使う」とか。
「タコやイカのゲノムは、原則的にヒトと同じ設計だ。」とも書かかれ
ているな存在に感じる。ここまで読むともうタコ。イカはわたしたちに
とってもずいぶん身近に感じる。まだまだ話は続く。あの奇妙なタコの
形を見ているととてもや哺乳動物と近縁とは思われない。それが進化の
過程で頭部は足元にくっついただけとか。進化の途中まではどちらも
〈魚形〉をしていた。頭足類の起源はあのオウムガイと言う。オウムガ
イはもともと殻は無かった生き物。コウイカなどはせなかに独特の〈高〉
を持つ。タコは「脳の細胞数だけでも1億個以上もある・」とか、9つ
の脳を持つという。ある種のタコは、遺伝子(RNA)の操作もやってのける
とか。遺伝子操作はヒトは数%なのに比べてじつに60%におよぶとか。
頭足類は人類とかけ離れているようだが、古代ギリシャ時代から注目・
研究が進んできた。以上のようにこの本にはユニークな内容が多い。
2025年4月 1,980円
『知れば楽しいクモの世界』(ちしきのもり)馬場友希著少年写真新聞社
クモはよく見るわりに生態や機能についてあまり知られていないのでは
ないか。この本は、クモの研究者がクモの生態について小学生でも読める
ようやさしく書かれている。第1章「くもってどんな生き物?」では、クモ
の糸や雄雌の違いなど、クモのあらかたの特徴がうまくまとめられている。
おもしろいのは第2章から。第2章は「クモの網と忍者のような能力」
である。イソウロウクモがいるなんて気づきにくい。円網をはるコガネグ
モ等に居候しているクモがいるとか。こんど円網をみつけたらイソウロウ
クモを探してみよう。約3億年前から生きているキムラクモも九州・沖縄
にはいる。「生きた化石」です。クモはカモフラージュも得意とか。ハチ
・鳥などの天敵を防ぐためコケ等に似たクモも多い。天敵アリに似たクモ
もいる。水面を生活にしているクモも多く水の上もスイスイあるく。1時
間程度なら水中にもぐるクモもいるとか。さらに海中に棲む「ミズクモ」
もいる。水中に網で出来たドームを作りそこで生活している。
第3章は「クモとヒトのつながり」。クモは肉食動物なのでさまざまな
昆虫を食べているが獲物の量は人間の肉の消費量より多い。まさに「陸上
の王者」に、びっくり。そのことがまた生態系保持に役立っている。なる
ほど。クモは樹木の間や土の中などさまざまな環境下で生息している。
家の中にもハエトリグモ、アシダカグモなどがいる。くもを採集するのは
簡単らしい。採集方法も書いてある。草むらなどでは網ですくいとり、樹
木などでは樹木の上を叩き落せばいい。いかにも簡単そうに見える。ここ
でおもしろい話がある。宇宙空間にクモをつれていったらしい。「宇宙で
はクモはどんな円網をはるだろうか」。宇宙は無重力空間、想像してみよう。
4章ではご自身のクモ研究経歴等を記している。子どもたちに「クモ研究も
おもしろいよ」と説く。 2024年 12月 1,600円